「カラフト伯父さん」感想その2 -カラフト伯父さんとの和解を考える-

前回のブログ記事で、カラフト伯父さんに対して憤怒した内容について書きましたが、「徹くんから借りたお金でお酒を飲んでしまった」こと以外は別に、怒りも湧かなかったし侮蔑の気持ちにもなれなかったんですよねえ。
むしろ私自身が普段あまりにも家族孝行をしていないので、仕事やなんやら多忙を理由に「気に掛けるべき存在」をつい蔑ろにしてしまっていたカラフト伯父さんはまるで自分のことのようで胸が痛みました。

本当なら、千鶴子さんの今際の言葉を胸にもっと徹くんを気に掛けるべきだったと思うし、そのタイミングでは徹くんの義父の存在への遠慮があって出来なかったというなら、義父が亡くなって徹くんが独りぼっちになってしまったタイミング(1998年?)ででも、もっともっと連絡したり、神戸に会いに行ったり、とにかくコミュニケーションをとって徹くんがどんな気持ちでいるのか感じることが必要だったと思います。
それをしてこなかったカラフト伯父さんは責められてもしょうがないとも思う。

だけど、「そうすべき」タイミングでそれが出来ないことありますよ、あるよね。人間だもの。

あと、自分が人生に失敗したからこそ、若者にはそうなって欲しくない。どうかこの「タイミング」で気付いて欲しいって気持ちにもなる。そして説教をしてしまう。これもほんとにわかる。
そんな感じで、カラフト伯父さんと自分が重なる部分はとても多かったのです。

カラフト伯父さんは「どうして自分はこんなにも徹に嫌われているんだ?」って思うんだけど、その原因に思いが至らない程鈍感だし、鈍感だからこそ、ここまで放置し続けてしまった。でもね、この2005年のタイミングでは、放置し続けなかった。カラフト伯父さんは徹くんの気持ちがわからないからこそ、一生懸命徹くんとの会話を試みたし、「もう金なら貸すから出て行ってくれ」と言わんばかりの拒絶にも、踏ん張ったんだと思います。四場?の最後、お金借りて「これで東京に帰れる」と喜ぶ仁美ちゃんとは対照的に、複雑な面持ちを見せるカラフト伯父さん。あそこの場面の升さんの表情、すごくグっと来るんですよねえ。

ほんとは「自分がどんな理由で嫌われてるか」聞くのって怖くないですか?
カラフト伯父さんには「徹は何を聞いてもダンマリばかりで話してくれないしわからん!どうしてか嫌われてしまったけど理解は出来なかった。当初の目的であるお金は借りることができたし、もう帰ろう」っていう選択肢もあったと思うんです。私ならそうしてしまうかもしれない。でも伯父さんは逃げなかった。徹くんのことを理解したかった。どんな理由で嫌われてるかちゃんと聞かないと離れられないと思った。それは自分の罪に気付かされる、とても辛い通過儀礼だと思う。そこに向き合うために、勇気を出すために、補助的に酒の力を借りなければならなかったんだなあと思うと、酒を飲んでしまったカラフト伯父さんも理解できるというか、怒りの気持ちよりも「まったく、弱くて仕方のない人だなあ」という愛着すら湧いてくる気がするのです。